かみ合わせ治療とは
かみ合わせの問題は
歯の負担を何倍にも引き上げます
あまり知られていませんが、お口のトラブルの大きな原因は「噛み合わせ」です。虫歯や歯周病はもちろんのこと、歯科医から原因不明と診断された歯痛、知覚過敏などを引き起こしているケースもあります。患者さま一人ひとりの噛み合わせの問題点を把握し、最適な治療をすることが重要です。
01かみ合わせとは
上の歯と下の歯がどのように接触するか、上下の歯の接触関係のことをいいます。
ヒトの場合、
上顎は、頭蓋骨に固定されていて、動きません。
下顎は、いくつかの筋肉によって頭蓋骨から釣り下がっている状態で、動きます。
(ワニは逆に上顎が動きますね)
歯が接触していない状態から、噛むときに働く筋肉が収縮した時、顎関節を支点にして、下顎が上顎に向かって閉じるように動いていきます。
その時
かみ合わせには4つの要素、「歯」・「筋肉」・「顎関節」・感覚や運動などをコントロールする「中枢神経系」が関与しています。
そのため
かみ合わせ(上下の歯の接触関係)に問題が生じると歯、筋肉、顎関節、中枢神経系のどこかに問題が発生してしまいます。
02かみ合わせの種類
かみ合わせが悪いいわゆる不正咬合は主に7つに分類されます。
原因はさまざまでまたそれによる影響も様々です。
上顎前突(出っ歯)
いわゆる出っ歯(上顎の前歯が下顎よりも前に出ている状態)です。前歯だけが前方に傾斜している場合と上顎が突出している場合があります。
下顎前突(受け口)
反対咬合とも言いますが、いわゆる受け口(噛んだときに下顎が上顎よりも前に出る状態)です。
上下顎前突
奥歯を咬み合わせたときに上顎・下顎の両方の歯が前方へ突出してしまう状態を指す不正咬合です。 日本人には比較的多く見られる症状と言われています。
開咬(上下前歯に隙間があるかみ合わせ)
オープンバイトとも呼ばれます。口を閉じたときに奥歯のみが噛み合い、前歯が噛み合わない状態です。不正咬合の中では、様々な問題を引き起こしがちな症状の1つです。
過蓋咬合(深すぎるかみ合わせ)
噛み合わせが深い状態です。過蓋咬合があると、一見歯並びが良いように見えても、噛み合せたときに、上の歯によって下の歯がすっぽりと覆い被さってしまいます。
空隙咬合(すきっぱ)
前歯の正中に隙間がある状態のことで、いわゆるすきっ歯です。
乱ぐい歯
歯が前後にガタガタに生えている、叢生(そうせい)の状態です。よくチャームポイントとされることもある八重歯もこの叢生の仲間です。
03良いかみ合わせと 悪いかみ合わせ
かみ合わせ異常があると咬合性外傷により以下のような症状が現れます。
- 歯の動揺
- 歯根膜腔の拡大
- 垂直性骨吸収
- 歯槽硬線の消失
- 歯根吸収
- 歯の咬耗
- 歯髄炎様疼痛
- 根分岐部病変
- 歯根破折
- 顎関節症
- 歯のくさび状欠損・知覚過敏
かみ合わせの異常には大きく3つの原因があります。
1. 早期接触
口を閉じたときに上下顎の歯の1歯またま数本の歯が他のはよりも早く接触する状態だとその歯に大きな負荷が集中してしまいます。
2. 咬頭干渉
奥歯のかみ合う面は、山の部分である咬頭と谷の部分である裂溝があります。 咬頭干渉とは、この山の部分(咬頭)が下顎を前後左右に運動させたときに邪魔な位置で当たってしまう(干渉)状態を指します。
3. 無接触
かみ合わせた時に上下の相対する歯がまったくかみ合わない(接触しない)状態だと噛んでいる他の歯が負担過重になります。
良いかみ合わせ
1. 時間的要素
全ての歯が同時に接触する
2. 力の要素
全てのかみ合う場所で力の負担が同じ
3. 数の要素
できるだけたくさんの点でかみ合う
4. 連続性の要素
途切れずに連続して平面を構成する
5. 運動要素
顎運動を妨げない形態
6. 形態要素
立体的に調和がとれていること
悪いかみ合わせ
1. 時間的要素の障害
早期接触がある
2. 力の要素の障害
かみ合う場所によって負担する力にばらつきがある
3. 数の要素の障害
かみ合う点が少ない
4. 連続性の要素の障害
歯列が途切れて連続しない
5. 運動要素の障害
スムーズに顎運動ができず妨げてしまう形態
6. 形態要素の障害
立体的な不調和
咬み合わせの不調和の症状と徴候
- 冷たいものや熱いもので歯がしみたり痛んだりする
- 歯ぎしり・食いしばりをしている
- 歯と歯ぐきの境目付近にV字型・クサビ型の切れ込みができている
- 朝、目覚めた時点ですでに、お顔の筋肉に疲労感などを感じることがある
- 前歯が、薄くなったり、削れてすり減っていたり、欠けたりしている
- ご自身の歯や歯の詰め物・被せ物が、ひび割れたり、欠けたり、削れたり、外れたり、壊れたということがある
- 顎が痛い・お口の開閉時に違和感など、顎の関節周囲の症状で辛い経験をしたことがある
- 下あごの内側や上あごの中央などで、骨が出てきたり盛り上がってきたりしている
- 原因不明の頭痛がある
これらに該当するものがあれば『かみ合わせの問題』を抱えているかもしれません。
04かみ合わせが悪くなる原因
例えば、歯が痛くなったり強い違和感があったりすると、そこを避けて噛むようになります。避けて噛むために無意識のうちにあごをずらして噛もうとします。あごをずらして噛むことが常態化すると、ずらした方に歯が寄って移動してしまい、かみ合わせが悪くなることがあります。
歯を失ったまま放置していると歯が傾いたり移動したりするので、かみ合わせが悪くなります。
骨に埋まっている親知らずは早めに適切な対処しないと、行き場のない親知らずが手前の歯を押し上げたり位置を変えてしまったりすることがあり、かみ合わせに悪影響を及ぼします。
虫歯の治療の後、詰め物や被せ物のかみ合わせのコントロールが不十分だと特定の歯に負担をかけ、虫歯は治ったけど、結果的にその歯の寿命を縮めることになりかねません。
歯周病が進行すると、歯がぐらぐらと揺れてかみ合わせが狂ってしまったり歯が移動したりしてしまうことがあります。
かみ合わせが悪くなった原因は、
自分では気づきにくいことがほとんどです。
実は、生まれてすぐ、哺乳行動を始めた時から、将来の良い歯並び・良いかみ合わせに発育するためのトレーニングが始まっています。歯がお口の中のどこに位置付けられるのか?は、頬や口唇などのお口の周りの筋肉と舌の筋肉(舌は筋肉の塊です)の力のバランスが影響します。この哺乳時期は、お母さんのおっぱいを飲みながら正しい呼吸・摂食・咀嚼・嚥下の機能と筋力のトレーニングを行っています。
現代人は哺乳類として自然に発育する状況に無いことがほとんどなので、トレーニングが不十分のまま成長していくことが多く、歯並びやかみ合わせが悪くなってしまいます。
かみ合わせの乱れによる体調不良
虫歯や歯周病の原因になる
咬み合わせが悪いとしっかり咬むことができず唾液の分泌量が少なくなります。唾液は、殺菌効果があり虫歯や歯周病予防に効果的。唾液が少なくなることは、虫歯・歯周病のリスクを高めることにつながってしまいます。
消化不良を引き起こす
咬み合わせが悪いので、食べ物を咬まずに飲み込むようになってしまいます。咀嚼せずに飲み込むことで消化器官に負担がかかってしまいます。
体のバランスが悪くなる
人間は全身のバランスを均等に保とうとする性質があります。咬み合わせが左右で非対称だと、あごや肩の筋肉でそれを補おうとし、体のバランスが不均等になります。
頭痛・肩こりを引き起こす
全身のバランスが崩れることで、筋肉や関節など体の節々に負荷がかかり、頭痛や肩こりを引き起こします
かみ合わせ治療のポイント
咬合治療・顎関節症と顎の運動の関係(テコの原理)
正常な顎運動では、支点:顎関節 力点:筋肉 作用点:歯 の関係性で、Ⅲ級のテコ構造になっています。
Ⅲ級のテコは、小さな動きを大きな動きに変換するテコです。
顎運動は、わずか数ミリの筋肉の収縮で数センチお口が開閉します。
力の効率はとても悪いですが、そのおかげで壊れにくく、繊細な動作が可能な構造です(和はさみ・お箸・魚釣り)。
Ⅲ級のテコとは
Ⅲ級のテコは、小さな動きを大きな動きに変換するテコです。
顎運動は、わずか数ミリの筋肉の収縮で数センチお口が開閉します。
力の効率はとても悪いですが、そのおかげで壊れにくく、繊細な動作が可能な構造です(和はさみ・お箸・魚釣り)。
Ⅰ級のテコ、Ⅱ級のテコでは問題が発生してしまいます
ランスが崩れて、奥歯が支点(奥歯が先にあたる・奥歯が横運動の時にあたる)になってしまうと、Ⅰ級のテコ構造(シーソー運動)やⅡ級のテコ構造(栓抜き・くるみ割り)が生じてしまいます。
Ⅰ級のテコ・Ⅱ級のテコは、小さな力を大きな力に変換するテコです。
顎関節を支点としたⅢ級のテコ構造が崩れて、顎運動の中にⅠ級のテコ構造やⅡ級のテコ構造が発生してしまうと、歯、顎関節や筋肉に過剰な力、破壊的な力が加わり、様々な症状が出現します。
少し難しく感じるかもしれませんが「下あごが運動して上下の歯が咬み合う一連の流れは、Ⅲ級のテコ。流れの中にⅠ級のテコ・Ⅱ級のテコが発生すると問題も発生してくる」という単純な構図です。
咬み合わせ治療・顎関節症治療で重要なことは、上下の歯の接触と顎関節の両方が安定・調和した状態にする事と関連する筋肉のトレーニングです。
かみ合わせを改善するためにさまざまな治療方法がありますが、スプリントでは安静状態を作って症状を緩和させるだけで原因の解決にはなりません。
歯だけを診てやみ雲に治療してもかえってバランスを失うこともあります。
外科処置が必要なケースは稀ですが、稀顎関節にメスを入れても治りません。
筋肉のトレーニングは大事だけが、顎関節症治療の一要素にすぎないためかみ合わせは改善されません。
歯と歯を支える骨の状態、上下の歯の接触状態や顎関節と関連する筋肉の状態について詳しく検査・診査し、全体のバランスを診ながら多角的に局所の治療やアプローチを行い、生活機能を損なわないように調和のとれた顎口腔系機能を構築・維持することこそが、正に歯科医療そのものなのです。
治療方法
治療方法は大きく4つあります。
状態にあわせた正しい治療を選択することが重要です。
リシェイピング
歯の形態を理想的に整えて修正することによって、対になる歯としっかり咬み合うように歯を調整します。特定の歯に負担がかかる状態を治します。非常に繊細な技術で咬み合わせを改善する治療です。
矯正治療
リシェイピングだけでは調整しきれないような歯の位置異常がある場合に咬み合わせの機能を矯正します。歯並びが原因で咬み合わせが悪い場合に矯正治療を行います。また、上の歯列だけ、下の歯列だけ、を見て、歯並びが良さそうに見えても上下の歯が噛んだ時に正常な機能を果たせていない場合もあります。
被せ物や入れ歯の作りなおし
過去に治療してある歯の場合。リシェイピングでは十分にかみ合わせ機能を回復させられない場合は、新たに作りなおしてかみ合わせを整えます。
スプリント治療
一般的な治療法です。しかし、一時的な対症療法です。マウスピースを使ってあごの関節にかかる負担を軽減することで、あごの痛みを緩和させます。
咬み合わせが乱れているお口は、ブラッシングがしにくく病気になりやい状況でもありますし、咬み合わせの乱れが原因で、特定の歯に負担がかかりもろくなるということもあります。
さらに、「ものが咬みにくい」「口が開きにくい」「あごが痛い」などの不調も咬み合わせが原因の場合があります。
きちんと検査をして、咬み合わせの問題点を把握することが大切です。
咬み合わせでお困りの方は、ぜひ当院の「咬合診断」をお受けください。あごの動きを再現する装置を用いて咬み合わせの診査を行い、現状の理解と最適な治療法・予防法についてご提案します。